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住宅ローンの繰り上げ返済とは?メリット・デメリットも要チェック!

住宅ローンをなるべく早く完済したい場合、検討したいのが「繰り上げ返済」です。まとまった資金が手元にあったら、すぐにでも繰り上げ返済をしたいと考えている方もいるかもしれません。しかし、本当にそれで大丈夫なのでしょうか。

今回は、住宅ローンの繰り上げ返済の特徴や、メリットとデメリットについて解説していきます。現在、住宅ローン返済中の方だけでなく、これから契約を考えている方も必ず確認しておいてください。


目次

  1. 住宅ローンの繰り上げ返済とはどのようなもの?
  2. 繰り上げ返済を行うタイミングとメリット
  3. 繰り上げ返済の注意点について

住宅ローンの繰り上げ返済とはどのようなもの?

住宅ローンの返済方法は、毎月コツコツと返済する「約定返済」だけではありません。まとまった金額を一気に返済する「繰り上げ返済」という方法もあります。手元の資金に余裕ができた場合は、検討してみてはいかがでしょうか。繰り上げ返済には、次の2パターンがあります。

  • 一部繰り上げ返済:残高の一部を返済する
  • 全額繰り上げ返済:残高すべてを一括で返済する

今回は、残高の一部を返済する「一部繰り上げ返済」について詳しくご紹介します。


一部繰り上げ返済とは?

住宅ローン残高の一部を返済するのが「一部繰り上げ返済」です。一部繰り上げ返済には、「期間短縮型」「返済額軽減型」の2つの方法があります。それぞれの特徴を知って、ご自身に合った方法を選択してください。なお、金融機関によってどちらか一方のみの取り扱いの場合もあります。

  • 期間短縮型
    毎月の返済金額はそのままで、返済期間を短縮する方法です。住宅ローンの完済時期を少しでも前倒したい方向きの繰り上げ返済方法といえます。完済までの期間が短くなるため、のちほどご紹介する「返済額軽減型」に比べると総支払利息が少なくなるのが特徴です。
  • 返済額軽減型
    返済期間は変わりませんが、毎月の返済額を減らすことができます。毎月の返済負担を減らしたい方向きの繰り上げ返済です。ただ、完済までの期間が変更されるわけではないため、返済額軽減型に比べると利息軽減効果はそれほど高くありません。

以下の条件で繰り上げ返済を行った場合、期間短縮型と返済額軽減型ではどの程度利息の差が生じるのか確認してみましょう。

  • 住宅ローン契約:2012年1月(借入期間35年)
  • 借入金額:3,000万円
  • 返済方法:元利均等方式
  • 金利:1.0%(契約から完済まで変更がないものとする)
  • 毎月返済のみ・ボーナス返済なし
  • 繰り上げ返済額:200万円
  • 繰り上げ返済時期:2022年2月
一部繰り上げ返済の種類 総返済額
期間短縮型 3,503万2,970円
返済額軽減型 3,530万7,443円

同じ金額を同じ時期に繰り上げ返済した場合でも、期間短縮型と返済額軽減型では27万円ほど総返済額が異なります。


繰り上げ返済を行うタイミングとメリット

住宅ローンの繰り上げ返済を検討すべきタイミングはいつなのでしょうか?また繰り上げ返済をすることのメリットも整理してみましょう。


繰り上げ返済を行うベストタイミングとは?

繰り上げ返済は、「行う時期が早いほど」「金額が多いほど」効果が高いといわれています。例として、以下の住宅ローンを繰り上げ返済した場合の試算をしてみましょう。

  • 住宅ローン契約:2012年1月(借入期間35年)
  • 借入金額:3,000万円
  • 返済方法:元利均等方式
  • 金利:1.0%(契約から完済まで変更がないものとする)
  • 毎月返済のみ・ボーナス返済なし
  • 返済期間短縮型で計算(毎月の返済額は変更なし)

【繰り上げ返済時期の違いで生じる総返済額の差】
繰り上げ返済の時期が10年違うと、利息の差がどの程度生じるのでしょうか。200万円繰り上げ返済した場合で計算してみましょう。

総返済額 繰り上げ返済なしと比較しての差額
繰り上げ返済なし 3,556万7,804円
2022年2月に繰り上げ返済 3,504万3,373円 52万4,431円
2032年2月に繰り上げ返済 3,528万829円 28万6,975円

繰り上げ返済時期が10年違うと、総返済額の差が約24万円生じています。繰り上げ返済は、早く行うほど利息軽減効果が高いことが分かります。

【繰り上げ返済金額の違いで生じる総返済額の差】
繰り上げ返済額の違いで、どれだけ総返済額の差が出るかも確認しましょう。上記の条件で2022年2月に繰り上げ返済したものとします。

総返済額 繰り上げ返済なしとの差額
繰り上げ返済なし 3,556万7,804円
200万円繰り上げ返済 3,504万3,373円 52万4,431円
500万円繰り上げ返済 3,437万509円 119万7,295円

同じ時期の繰り上げ返済ですが、繰り上げ返済額が300万円違うだけでこのケースでは総返済額の差が約67万円発生します。


繰り上げ返済のメリットとは?

繰り上げ返済を行うと、支払い予定の利息の軽減が可能です。返済期間短縮型と返済額軽減型では、以下のようにメリットが異なります。

  • 返済期間短縮型:完済までの期間を短縮できるため、利息軽減効果が高くなる
  • 返済額軽減型:毎月の返済負担を軽減できる

「毎月の返済額はそのままでも構わないが、完済までの期間を短くしたい」もしくは、「完済までの期間はそのままでも構わないが、毎月の返済負担を減らしたい」など、どちらがご自身の状況や今後のマネープランに合っているのかを考えて繰り上げ返済を行いましょう。


繰り上げ返済の注意点について

繰り上げ返済には、利息軽減効果がある一方で注意点もありますので確認しておきましょう。


手数料はかからないか?

金融機関の中には、繰り上げ返済に手数料がかかる場合があります。また、ネットで手続きを行えば無料でも、窓口で手続きを行えば有料になるなど手続き方法で手数料の金額が異なる場合もあります。この点については、住宅ローン契約前に確認しておくと安心です。


家計に負担が生じないか?

まとまった資金で繰り上げ返済を行うと、住宅ローンの利息軽減が可能です。しかし、貯蓄を繰り上げ返済へ充当したことで、家計に負担が生じないかをよく考える必要があります。特に、将来的に教育費や医療費などがかかる予定がある家庭は注意が必要です。

また、電化製品の買い替えや住宅の修理など、予定外の出費が生じる可能性もあります。突発的な出費や将来の支出を考慮して、余裕資金をすべて繰り上げ返済に使うのではなく、手元に予備費として残すことも考えましょう。


繰り上げ返済金額に制限がないか?

金融機関の中には、「繰り上げ返済は毎月の返済額単位で」「10万円以上から」など、金額に制限が付く場合もあります。これから住宅ローンを契約する方で小まめに繰り上げ返済をしたいと考えている場合は、繰り上げ返済金額制限が比較的やさしい金融機関を探しましょう。


住宅ローン減税のことも考えよう

住宅ローン減税を受けている場合、繰り上げ返済は慎重に考える必要があります。なぜなら、繰り上げ返済で期間短縮型を選択した場合、住宅ローン減税対象から外れる可能性があるからです。

例えば以下のケースの場合、住宅ローン減税の対象から外れてしまいます。

  • 住宅ローン借入期間:15年
  • 返済し終えた期間:2年
  • 繰り上げ返済で短縮した返済期間:7年
  • 繰り上げ返済後の残り返済期間:6年

住宅ローン減税のためには「返済し終えた期間」と「繰り上げ返済後の残り返済期間」の合計が10年以上(※)必要です。このケースでは、以下のようになり住宅ローン減税の対象から外れてしまいます。

  • 合計8年(返済し終えた期間2年+繰り上げ返済後の残り返済期間6年)<10年

繰り上げ返済で期間を短縮するメリットは大きいですが、住宅ローン減税を受けている人は短縮期間も考慮しましょう。減税できる金額によっては、繰り上げ返済するメリットが少なくなる可能性もあります。

  • ※ 2022年税制改正で住宅ローン減税期間が変更になりますが、この例ではすでに住宅ローン契約をしており、10年の減税期間適用中のケースでご紹介しています。

まとめ

住宅ローンの繰り上げ返済を行えば、利息が減るため総返済額も減らすことができます。特に、毎月の返済金額を変えずに返済期間を短縮する「期間短縮型」の繰り上げ返済を選択すれば、利息軽減効果はさらに高くなるでしょう。

ただし、お得になるからといって、貯蓄をすべて繰り上げ返済に充当するのはおすすめできません。生活費や将来必要になりそうな資金は確保できているか、住宅ローン減税の対象から外れないか、なども慎重に考えてから行いましょう。

◆氏名
田尻宏子(たじり・ひろこ)

◆保有資格
2級FP技能士
証券外務員第一種

◆プロフィール
複数の金融機関での勤務経験や証券外務員第一種、ファイナンシャル・プランニング技能士2級の資格を活かし、金融関連専門のライターとして活動中。生損保・不動産・ローンの情報を中心に「誰でも分かりやすい記事をお届けする」をモットーに執筆。

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