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銀行からのお知らせ
住宅ローンの借入額は数千万円にもなり返済期間も長期にわたるため、少しでも返済負担を抑えることができるものを選びたいものです。変動金利は固定金利に比べて、適用金利が低くなりやすいというメリットがありますが、今後の金利の状況によっては返済額が増加してしまうというデメリットもあります。
本記事では変動金利の特徴およびメリット・デメリットを紹介しつつ、どのような人に変動金利が向いているかを解説します。
目次
住宅ローンの変動金利を選ぶ人の割合
住宅ローンの金利タイプは、大きく分けて「変動金利」「固定金利(期間選択型)」「固定金利(全期間型)」の3種類です。住宅金融支援機構が実施した「住宅ローン利用者調査(2023年4月調査)」によると、これらの3種のうち変動金利を選んだ人の割合は72.3%と最も多くなっています。
また、変動金利を選ぶ人は増加傾向です。2019年10月以降の調査からの状況を見てみましょう。
調査対象期間 | 変動金利 | 固定金利 | |
---|---|---|---|
期間選択型 | 全期間型 | ||
2019年10月~2020年3月 | 60.2% | 26.6% | 13.2% |
2020年4月~2020年9月 | 62.9% | 24.5% | 12.6% |
2020年10月〜2021年3月 | 68.1% | 20.7% | 11.2% |
2021年4月〜2021年9月 | 67.4% | 21.7% | 10.9% |
2021年10月〜2022年3月 | 73.9% | 17.3% | 8.9% |
2022年4月〜2022年9月 | 69.9% | 20.1% | 10.0% |
2022年10月〜2023年3月 | 72.3% | 18.3% | 9.3% |
住宅ローンの変動金利の仕組みについて
住宅ローンの変動金利とは、返済期間中に適用金利が上昇または下落する可能性のある金利タイプです。適用金利が見直されるタイミングは金融機関によって異なりますが、一般的に半年ごとに金利の見直しが行われます。
変動金利は、「短期プライムレート」の動きに連動しています。短期プライムレートとは、金融機関が優良企業に対して短期(1年未満)で融資をする際に適用する金利のことで、日本銀行が決める政策金利に影響を受けて変動します。
変動金利タイプは、固定金利タイプと比べて金利が低い傾向がありますが、将来の金利の変動の影響を受けやすいという点に注意が必要です。金利が下がると住宅ローンの利息が減り、当初想定していた総返済額よりも実際の返済額が減る場合があります。しかし、逆に金利が上がると利息が増え、想定した総返済額よりも実際の返済額の方が高くなる可能性があります。住宅ローンの総返済額の予想がつきにくいため、人によっては計画的に貯蓄を行うのが難しいと感じる場合もあるでしょう。
住宅ローンの変動金利の特徴
変動金利は、約7割の人が選択していますが、これは一般的に「変動金利は固定金利よりも金利が低め」という特徴が大きな理由として挙げられます。変動金利のもうひとつの大きな特徴は、「経済情勢などに応じて、通常半年に1度見直しが行われる」ということです。
多くの金融機関では、年2回、4月と10月に金利が見直しされ、見直しされた金利が6月および12月(金融機関によっては7月・翌年1月)から適用されます。「適用金利が変わると毎月の返済額も頻繁に変わるのでは?」と不安に感じる人もいるかもしれません。
しかし、実際に半年ごとに毎月の返済額が変わる可能性は非常に低いです。多くの金融機関では、変動金利に「5年ルール」を採用しています。その場合、半年ごとに適用金利が変わっても、毎月の返済額の変更は5年ごとに行われます。つまり、5年間は返済月額が変わりません。
ただし、これは元利均等返済の場合に適用されるルールです。元利均等返済は、毎月の返済額は一定で、返済が進むごとに返済月額のうちの元本と利息の割合が変わっていく返済方法となります。半年ごとに金利が見直しされた場合、例えば金利が上昇すれば毎月の返済額のうち利息割合が多くなりその分元本の割合は少なくなるのが特徴です。
金利が低下した場合には、その逆となります。このように、月々の返済額に占める元本と利息の割合を調整しながら5年間は同じ返済月額を保つようにしているため、適用金利が変動したことに気づかない人もいるかもしれません。
それでも、金利状況によっては5年後に返済月額が見直しされるようになります。もちろん、金利が下がる場合もあるでしょう。しかし、金利が上がり毎月の返済額が増える場合は、いままでの返済月額の125%を上限とする「125%ルール」というものもあります。
なお、元金均等返済は、毎月の元本部分の返済額が一定です。一定の元金に利息を上乗せして返済する方法ですので、そもそも元々毎月の返済額は異なります。そのため、5年ルールも125%ルールも適用されません。
変動金利のメリットと向いている人とは?
ここで、変動金利のメリットおよび、どんな人に向いているのか確認しておきましょう。
変動金利のメリット
変動金利の一番のメリットは、固定金利よりも金利が低い場合が多いことです。2024年2月現在、金融機関によっては0.2%台で借り入れできるところもあります。金融機関との取引状況やキャンペーンの適用などによっては、さらに金利が引き下げられることもあるでしょう。
また、変動金利を選択している場合は、いつでも固定金利に切替ができる点もメリットです。将来の金利に上昇の兆しがあれば、大きく上がる前に固定金利に変更しておくことで、その後の返済負担を抑えることも期待できるでしょう。
変動金利に向いている人とは?
変動金利に向いている人は、次のような人です。
- しばらくは金利が上昇しないと思う人
- 金利の上昇および返済月額の増額にも対応できる人
- 借入期間が短い人
- 金利動向をこまめにチェックできる人
- 積極的に一部繰上返済を行う人
変動金利は、金利の低さが魅力です。そのため、低金利状態がしばらく続き、上昇しないと考える人は、変動金利を選ぶのがよいでしょう。また、仮に途中で少々返済月額が上がってもきちんと対応できるなら、当面は低金利のメリットを享受しておくのも選択肢のひとつです。
例えば、将来的に教育費の支払いや介護資金の準備などをあまり考えなくてもよい人は、返済月額が増えても対応できるかもしれません。借入期間が短く、遠い先の金利動向まで心配する必要がない人も変動金利を選んで低金利で借り入れするのがおすすめです。
ほかにも、こまめに金利動向をチェックでき、金利動向を見ながら固定金利へ変更するなど適切な対応ができる人も変動金利を選んでおいて問題ないでしょう。
固定金利と変動金利どっちがいいの?
今後賃金と物価が共に安定して上昇していった場合、金利上昇局面に転じる可能性があることは認識しておいた方が良いでしょう。
これから住宅ローンを組もうと考える人は、固定金利と変動金利のどちらを選ぶべきか悩むかもしれません。変動金利の方が固定金利に比べて当初金利を低く押さえやすい一方、将来の金利上昇によって返済額が増えてしまう可能性もあるためです。
金利の動向は専門家でも予測が難しいため、固定金利と変動金利のどちらが良いのかは一概には言えません。迷ったら変動金利と固定金利を組み合わせるミックスローンを検討してもよいでしょう。
変動金利は今後上昇する?推移でみる今後の変動金利
2024年以降の変動金利はどうなるのでしょうか。これまでの変動金利の推移や現在の金利相場をもとに、今後の変動金利についてどのように考えれば良いかを解説していきます。
変動金利のこれまでの推移
2024年2月現在の変動金利の水準は、過去の金利と比べると非常に低い水準にあります。バブル期の終わり頃である1990年代前半には、変動金利の基準金利は8%を超えたこともありましたが、以降は右肩下がりの推移です。
日本では、長年金融緩和を継続してきたことで、固定金利・変動金利ともに低い水準が続いていましたが、2022年の年末頃からは固定金利が徐々に上昇し始めています。固定金利が上昇した背景としては、日銀が2022年12月に発表した金融緩和政策の修正や世界的な金利上昇などがあると考えられます。
変動金利についても、今後の金融政策の状況によっては上昇することも考えられるでしょう。
今後の変動金利について
住宅金融支援機構が実施した「住宅ローン利用予定者調査(2023年10月調査)」によると、今後5年以内に住宅ローンを利用しようと考えている人の住宅ローン金利見通しについては下記の通りとなっています。
現状よりも上昇する | ほとんど変わらない | 現状よりも低下する | 見当がつかない | |
---|---|---|---|---|
2023年10月調査 | 53.3% | 20.6% | 8.5% | 17.6% |
2023年4月調査 | 48.2% | 26.5% | 8.1% | 17.3% |
今後1年間の住宅ローン金利について、住宅ローン利用予定者の5割以上が「現状よりも上昇する」と考えています。この割合は、前回調査から約5%増加しており、今後の金利についてはある程度上昇するのを前提としている人が多いようです。
今後の変動金利の行方については、日銀の金融政策がポイントとなります。日銀は、賃金の上昇を伴った2%の物価安定目標を掲げており、この目標の達成ために金融緩和を継続してきました。
今後の変動金利を予測する上では、「物価」と「賃金」の動向に注目しつつ、日銀がどのような判断をするかに注意するのが大事です。
まとめ
住宅ローンの変動金利は、固定金利に比べて低金利で借り入れしやすいというメリットがあります。しかし、通常半年ごとに金利が見直しされるため、金利動向によっては利息負担が大きくなったり、返済額が変わったりするリスクがあります。
金利が見直しされても、すぐに返済負担に影響を与えないよう5年ルールや125%ルールが設けられている金融機関もあるため、家計への影響は限定的と感じる人もいるかもしれません。しかし、金利動向によっては未払利息が発生し、最後にまとめて支払う必要もあります。そのため、変動金利を選ぶ際は、メリット・デメリットをしっかりと理解して、自分に適した金利タイプかどうかを見極めましょう。
加えて、変動金利を選択する際は、今後の金利の見通しについてもある程度予測を立てた上で、余裕を持って返済できる計画を立てておくことが重要です。金利が上昇した場合のシミュレーションも行いつつ、無理なく返せるように住宅ローンを組むようにしましょう。