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銀行からのお知らせ
自分の住宅ローンの借入可能額を知っておくと購入物件を検討しやすくなります。なぜなら、借入可能額はさまざまな条件で決まり、必ずしも自分が借りたいと希望する金額をそのまま借りられるとは限らないからです。
本記事では、住宅ローンの借入可能額に影響を与える要素について説明します。借入可能額が借入希望額に足りない場合の対処方法についても説明しますので、参考にしてください。
目次
住宅ローンの返済はきちんとできる?
住宅ローンは、数千万円程度と高額になり、返済期間も数十年におよびます。そのため、借入可能額がいくらになるかを知る前に、まずは自分が希望する金額を借りられた場合、きちんと返済を続けられるかどうかが大切です。
もし、「自分が借りたい金額では返済が厳しそう」と感じる場合は、借入希望額を下げることも検討しましょう。多くの金融機関では、希望する借入金額と借入期間から毎月の返済額がどの程度になるかサイト上で試算できるシミュレーションを提供しています。
適用金利や金利タイプ、借入期間など、条件をいろいろと変えながらシミュレーションして、返済月額および返済総額がいくらになるかイメージをつかんでおきましょう。
年収の何倍借りられる?
いくら借り入れしたいかを考えるときには、他の人たちが「年収の何倍の住宅を購入しているか」をチェックしてみるのもひとつの参考になります。住宅金融支援機構の調査を参考に、以下の表で住宅ローンの利用者が住宅購入に際してどれぐらい資金がかかったか住宅の種類別・年収別に表にまとめてみました。
ちなみに、年収倍率とは、住宅購入にかかった資金を世帯年収で割った数値です。言い換えると年収に年収倍率を乗じた数値が購入資金額となります。
年収倍率 | 平均購入額 | |||
---|---|---|---|---|
年収400万円の人 | 年収500万円の人 | 年収600万円の人 | ||
土地付注文住宅 | 7.4倍 | 約2,960万円 | 約3,700万円 | 約4,440万円 |
マンション | 7.0倍 | 約2,800万円 | 約3,500万円 | 約4,200万円 |
建売住宅 | 6.8倍 | 約2,720万円 | 約3,400万円 | 約4,080万円 |
注文住宅 | 6.7倍 | 約2,680万円 | 約3,350万円 | 約4,020万円 |
中古マンション | 5.8倍 | 約2,320万円 | 約2,900万円 | 約3,480万円 |
中古戸建 | 5.5倍 | 約2,200万円 | 約2,750万円 | 約3,300万円 |
出典:住宅金融支援機構「2020年度 フラット35利用者調査」 を元に筆者作表
購入に要した資金額のすべてを借り入れしているとは限りませんが、頭金を1~2割と考えた場合は、表中金額の8~9割の金額を目安にするといいでしょう。
住宅ローンの借入可能額はどうやって決まる?
実際に、住宅ローンの借入可能額は、どのようにして決まるのでしょうか。実は、さまざまな要素をもとに判断されるため、どの要素がどうであればいくらまで借り入れできるという基準を明言することはできません。しかし、どんな要素が考慮される傾向にあるかは住宅ローンの申込条件や提出書類などから、おおよその内容をつかむことはできます。
収入を考慮
正式審査を申し込む際の必要書類のひとつが「収入を証明する書類」です。そのため、収入は、借入可能額の判定に影響を与える要素と考えられます。収入を証明する書類として何の提出が必要になるかは、金融機関によって異なるでしょう。
例えば、会社員で給与所得のみの場合、直近1年分の源泉徴収票、および住民税決定通知書または収入金額記載の住民課税証明書などが必要です。なお、給与所得者でも歩合給が含まれる場合など、収入構成や業種によっては直近2年分の証明書類を求められる 場合もあります。
これは、歩合等で収入額が変動しやすい状況でも平均してどの程度の収入があるかを確認するためと推察できるでしょう。
申込年齢を考慮
住宅ローンの申込条件として、どの金融機関でも年齢を定めています。具体的な年齢は、金融機関によって異なりますが、例えば借入時の年齢が20~65歳など幅があることが特徴です。
また、完済時の年齢も定められており、一般的には満80歳になる前の完済が条件となります 。そのため、高年齢で住宅ローンを申し込みする場合は、完済までの年数が短くなってしまうため、注意が必要です。
高額な借入額を短期間で返済しなければならないのは、住宅ローンの契約者だけでなく、金融機関にとってもリスクが大きくなってしまいます。そのため、年齢が高い場合は借入可能額が少なくなる可能性があるでしょう。
逆に、若い人のほうが借入期間を長く設定できることから、借入可能額が多くなる傾向があります。
他に借り入れはないか?
他に借り入れがある場合は、正式審査申込みの際に「返済予定明細表」など、借入残高と毎月の返済額を確認できる書類を提出が求められる場合があります。そのため、他の借入状況も借入可能額の判定に影響を与える要素のひとつと考えられます。
金融機関は、融資をするにあたり、申込者の返済負担率 (返済比率)もチェックします。返済負担率とは、新規申し込みする住宅ローンの他、すでに借り入れしている他のローンの年間返済額も合計したすべての借入に対する年間の返済額が、年収に対してどれぐらいの割合になるかを示す数値です。
返済負担率が高くなり、返済困難になってしまうリスクを防ぐため、金融機関それぞれに一定の基準を設けているといわれています。そのため、すでに借入残高がある場合は、新規の借入可能額を低くすることで全体の返済負担率が一定基準の範囲内に収まるよう調整される可能性があるでしょう。
もちろん、既存の借り入れをきちんと返済し続けていることも大切な要素です。
物件の価値
住宅ローンは、融資対象となる物件を担保に入れて借り入れをするローンです。そのため、物件(担保)の価値も借入可能額に影響を与える要素と考えられます。本審査申込の際には、一般的に売買契約書や工事請負契約書、建築確認済証などの物件の価値を評価できる書類の提出が必要です。
借入可能額が少ない!という場合はどうする?
借入可能額を決める主な要素をいくつか紹介しましたが、できるだけ借入可能額を大きくするには、それぞれの評価を上げることが望まれます。例えば、すでに他で借入金がある場合は、住宅ローンの申し込みをする前に繰り上げ返済をして完済したり、借入残高を減らしたりすることも方法のひとつです。
しかし、年収に関しては、自分で上げようと思ってもすぐに上げられるものではありません。年収が低くて借入可能額が少なくなるかもしれない人は、次の方法を検討してみましょう。
夫婦・親子で住宅ローンを組もう!
年収が気になる人は、自分1人で住宅ローンを組むよりも、夫婦または同居する親子で住宅ローンを組める「ペアローン 」の利用を検討してみましょう。夫婦・親子どちらの場合でも、ペアローンを一緒に組む2人ともに収入があることが条件で、それぞれの収入に応じた借入可能額が決められます。
例えば、4,000万円の借り入れをしたいけれども、1人の収入では3,000万円程度の借り入れとなってしまう場合、2人分を合わせることで希望する4,000万円の借り入れができる可能性があるでしょう。
ただし、ペアローンは、それぞれが住宅ローン契約者(兼、相手の連帯保証人)となり、住宅ローンは2本になります。そのため、登記費用などの諸費用は2人分かかりますので、資金計画には注意しましょう。
また、各人の借入額の割合が住宅の持ち分に一致していない場合は、税務署から相手に対する贈与とみなされる可能性があることにも注意が必要です。
まとめ
住宅ローンの借入可能額は、年収や申込年齢、他の借入状況、物件価値などさまざまな要素の影響を受けます。借入可能額をできるだけ大きくするためには、それぞれの要素が、どのように影響するのかを知り、評価が上がる工夫をしてから申し込みをするのがよいでしょう。
年収が低めで借入可能額が気になる人は、ペアローンの利用もおすすめです。しかし、「借り入れできる金額」「きちんと返済できる借入額」は別物です。まずは、自分が希望する金額を借り入れできた場合の毎月の返済額がいくらになるかシミュレーションし、きちんと返済できそうかイメージしておきましょう。
◆氏名
續 恵美子(つづき・えみこ)
◆保有資格
日本FP協会認定CFP(R)
◆プロフィール
生命保険会社にて15年勤務した後、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指し退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。