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銀行からのお知らせ
2022年3月時点で住宅ローンの変動金利は、0.5%を切る金融機関もあります。高い金利の時代に借り入れをした住宅ローンがある場合は、借り換えを検討している方もいるのではないでしょうか。住宅ローンの借り換えは、毎月の返済を見直すよい機会です。
低金利の住宅ローンに借り換えをすると、「家計の見直しができる」「貯蓄にお金を回せる」「保障が充実している団信へ加入できる可能性がある」など、多くのメリットがあります。
一方で、借り換えをする場合は手数料などの諸費用のチェックが必要です。本記事では、住宅ローンの借り換えの概要や、借り換え時の手数料、その他の費用を解説しつつ、お得に借り換えをするためのポイントも紹介します。
目次
住宅ローンを借り換えた方がいい人とは?
一般的に、住宅ローンの借り換えでメリットがあるかどうかは、以下の3つの目安を基準に考えるのがよいといわれています。
- 借り換え前と借り換え後の金利差が1%以上ある
- ローン残高が1,000万円以上残っている
- ローン残年数が10年以上残っている
例えば、変動金利であれば住宅ローンの金利は、2022年3月時点で0.5%を切る金融機関もあります。そのため、借り換え前と借り換え後の金利差が大きければ、住宅ローン残高が1,000万円以上なくてもメリットが出る可能性はあるでしょう。
また、住宅ローン残高が多かったり、返済年数が長かったりするケースでは、金利差1%以上とならない場合でも、メリットが出る可能性はあります。3つの目安のうち該当するものがあれば、借り換えを検討する価値は十分にあるため、確認してみましょう。
実際にどれくらい借り換えのメリットが出るかは、金融機関のサイトにあるシミュレーションなどを活用して確認することが可能です。例えば、住信SBIネット銀行のサイトには、現在借り入れ中のローンと借り換え後のローンの返済額を簡単に比較できるツールがあります。
借り換えを検討している方は、どのくらいメリットが出るか一度試算してみましょう。
参考:住宅ローン - お借換試算|NEOBANK 住信SBIネット銀行
住宅ローン借り換えを考えたいタイミング
将来の金利がどのように変化するのかは誰にも予想できません。また、借り換えのメリットは、人によって考え方が異なるため、目先の金利だけで決めるのは問題があります。ここでは、住宅ローンの借り換えを考えたいタイミングについて見てみましょう。
金利上昇局面
大手銀行が2022年2月から住宅ローンの10年固定金利を引き上げたことがニュースになりました。「今後は変動金利も上昇していくのでは?」と考え、固定金利での借り換えを検討している方が増えているといわれています。
住宅ローンは、最長35年という長期間の借り入れとなります。住宅ローンの借入時点で、将来にわたる金利を予想することは難しいため、金利が上がりそうなタイミングで住宅ローンの見なおしをすることをおすすめします。
変動金利の場合は、金利が上がれば将来的に返済額が増加する可能性があります。しかし、固定金利の場合は長期間金利が固定されるため、期間中の返済額は変わりません。固定金利は、金利上昇時のリスクヘッジにつながるため、金利上昇局面では効果的です。
金利が上がりきってから固定金利に借り換えてもメリットがないため、金利が上がる兆しが見えたときが借り換えのタイミングのひとつといえます。
団信の保障を充実させたいとき
住宅ローンは、団信(団体信用生命保険)に加入できることが大きな特徴です。団信とは、住宅ローン契約者に万が一のことがあったときに、保険金で住宅ローンの残債が完済できる保険です。
団信は、住宅ローンを組む際の条件となっている金融機関も多く、住宅ローンを利用している多くの方が団信に加入しています。以前は死亡や高度障害となった場合にしか保険金が下りないものも多くありましたが、近年は、以下のようにさまざまなタイプの団信が取り扱われています。
- 3大疾病団信:ガンや脳卒中、急性心筋梗塞など3大疾病になったときに保険金が出る
- 全疾病保障:精神障害などを除くすべての病気やケガが原因で就労不能になったとき毎月の返済が保障されるなど
こういった団信に金利上乗せなしで加入できる金融機関もあります。現在の住宅ローンが一般的な団信のみの場合は、借り換えによって保障を充実させられるというメリットもあるのです。
保障内容によっては、保険料分が金利に上乗せされることもありますが、住宅ローンは高額な借り入れとなるため、保障内容が充実した団信に加入している安心への対価と捉えることもできます。
このように、借り換えのメリットは必ずしも金利だけではありません。
毎月の返済額を減らしたいとき
住宅ローンを組んだときは、夫婦共働きで収入に余裕があっても、子どもが大きくなって予想以上に教育資金がかかり、当初の返済額では家計が厳しくなるケースも考えられます。「借り換えで金利が下がれば、家計が助かる」「毎月の返済額が少なくなった分、貯蓄に回したい」という方もいるのではないでしょうか。
例えば、住宅ローン3,000万円を金利1.5%から1%と0.5%に借り換えた場合、毎月の返済額や総返済額は以下のように変わります。
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金利 | 毎月の返済額 | 総返済額 |
---|---|---|
1.5% | 14万4,763円 | 3,477万1,511円 |
1% | 13万7,968円(▲6,795円) | 3,313万1,175円(▲164万336円) |
0.5% | 13万1,380円(▲1万3,383円) | 3,154万571円(▲323万940円) |
住宅ローン借り換えには手数料がかかる
借り換えには、多くのメリットがあることを紹介してきました。しかし、住宅ローンの借り換えは新規で住宅ローンを組んだときと同じく、手数料などの諸費用がかかることにも注意しなければなりません。借り換えする金額によって諸費用は大きく異なり、場合によっては数十万円の費用がかかることもあります。
ここでは、住宅ローンの借り換えでどのような費用がかかるのかを見ていきましょう。
事務手数料
金融機関が任意で設定できる手数料で、「借入金額×〇%」などと借入金額に対して一定の割合で計算する金融機関が多い傾向です。借入金額が大きくなければ負担は気になりませんが、借入金額が大きいと高額になるケースもあります。
保証料
住宅ローンは、保証会社の保証を条件とする場合があります。保証料を一括支払いとする金融機関もあれば、金利や事務手数料に含める金融機関もあります。保証料分が金利に上乗せされる場合は、金利差が実質どの程度あるかをよく確認しなければなりません。保証料不要の金融機関を選べば、諸費用をおさえることができます。
また、現在の住宅ローンを借り入れする際に保証料を一括で支払っていた場合には、全額繰り上げ返済をすると保証料の一部が返ってくる可能性がある点も押さえておきましょう。
団体信用生命保険料
一般的な団信は、団信保険料を銀行負担とすることで別途保険料が発生しないことが多い傾向です。しかし、8大疾病団信やがん団信など特約を付ける場合は、金利が上乗せされたり、保険料の支払いが発生したりする可能性があります。金融機関によって保険料の要否や上乗せされる利率が異なるため、保障内容とあわせて保険料についても確認が必要です。
その他の費用
住宅ローンの借り換えを行う際は、印紙税や登録免許税、司法書士報酬などの費用が発生します。印紙税は紙面での契約の場合は必要ですが、電子契約ができる場合は不要です。WEBで申し込みや契約まで行える金融機関なら、店舗へ足を運ぶ手間も省けるでしょう。
住宅ローンの借り換えは、手間がかかるのもデメリットのひとつとなるため、手間が省けて節約につながる金融機関を選ぶこともポイントです。また、完済時の手数料や抵当権抹消の手数料も忘れずに計算に含めて、トータルでどのぐらいメリットが出るのかを算出しなければなりません。
まとめ
住宅ローンの借り換えは、金利差があるほどメリットが大きくなります。現在契約している住宅ローンの変動金利が低い場合でも、将来の金利まで約束されたものではありません。固定金利を中心に住宅ローンの金利を引き上げている金融機関もあり、金利動向によっては、固定金利でリスクヘッジも検討すべきでしょう。
また、住宅ローンの借り換えには、手数料がかかることも念頭に置いてシミュレーションしてください。わずかな金利差で借り換えを行ってしまうと、場合によっては借り換えの手数料でメリットがあまり出ない可能性もあります。
住宅ローンの借り換えをする際は、金利だけではなく、借り換えを行うタイミングや目的、借り換えにかかる費用、金融機関選びなど、慎重に検討することが大切です。
◆氏名
加治 直樹(かじ・なおき)
◆保有資格
1級FP技能士
社会保険労務士
◆プロフィール
銀行に20年以上勤務し、融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務を経験。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得。退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は労働基準監督署で企業の労務相談や個人の労働相談を受けつつ、セミナー講師など幅広く活動中。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタントを目指す。法人個人を問わず対応可能で、会社と従業員双方にとって良い職場をつくり、ともに成長したいと考える。