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銀行からのお知らせ
一般的に住宅ローンの審査は、事前審査と本審査の2回あります。それぞれに審査する内容や基準が異なり、事前審査でOKでも必ず本審査が通るわけではありません。本記事では、事前審査と本審査の違いについて説明していきます。それぞれの違いを知って、住宅ローン借り入れに向けて対策をしておきましょう。
目次
住宅ローンの申し込みから融資までの流れ
まずは、住宅ローンの申し込みをしてから無事に借り入れできるまでの一般的な流れを確認しておきましょう。
- 事前審査(仮審査)
- 本審査(正式審査)
- 本審査に通過後、契約手続き
- 借り入れ(融資実行)
これを見てわかるように、一般的な住宅ローンの審査は、事前審査と本審査の2回です。保証会社付きの住宅ローンの場合は、融資する金融機関の2回の審査のなかで、保証会社の審査も行われます。
事前審査と本審査の違い
なかには、「なぜ2回も審査があるの?」「1回にまとめればいいのでは?」などと考える人もいるかもしれません。しかし、事前審査と本審査では、審査の目的および確認する項目が異なります。両者の主な違いを見ていきましょう。
事前審査とは
事前審査は「仮審査」ともいわれ、本審査の申し込みをする前に行われる簡易的な審査を指します。住宅ローンは、一般的に数千万円という高額、かつ数十年という長い期間の借り入れになることが多いです。
そのため慎重な審査が必要で、さまざまなチェック項目があり、事前審査を申し込んでから本審査、融資決定となるまでに1ヵ月以上 かかるケースもあります。そもそも購入する物件が決まらなければ銀行側は正式な審査ができません。
一方、借入希望者は、借り入れできる見込みがなければ住宅購入資金の目途が立たないため、場合によっては、審査を待っている間、ほかの人にお目当ての物件を申し込みされてしまうかもしれません。
これらのさまざまな事情から、住宅ローンを借り入れできるかどうかの「見込み」の確認を主な目的として事前審査が行われます。事前審査では、主に申込者が申告した収入や借入希望額などをもとに審査が行われるのが一般的です。
金融機関よって異なる場合もありますが、具体的には申込者の年収、返済負担率(返済比率)、年齢や職業などがチェック されます。複数の金融機関へ申し込みすることも可能で、事前審査をしたからといって必ず借り入れしなければならないわけではありません。
本審査とは
本審査とは、正式に住宅ローンを申し込むことで行われる審査です。
正式審査において無事に審査に通れば住宅ローンを契約できます。住宅ローンを毎月きちんと返済できるか、担保を設定する物件価値は充分かなどを正確に審査するのが本審査の目的です。
そのため、事前審査よりも厳密に行われ、申告内容に加えて提出書類も精査されます。事前審査に通っても、必ず本審査に通るわけではない点は押さえておきましょう。
本審査でチェックされること
本審査では、住宅ローン申込者の返済能力や対象物件(担保)の価値の確認が行われます。そのため、これらを見積もるためのさまざまな項目が詳細に審査されます。本審査で重視される項目や基準は、各金融機関が独自に設定しており公開されていません。
しかし、主な申込条件から本審査で重視される項目は考察できるため、一部をご紹介します。
- 完済時年齢
完済時年齢は、最終返済時の年齢のことで、住宅ローンの申込条件のひとつとして重視される項目です。完済時年齢を何歳とするかは、金融機関ごとに異なります。一般的には、満80歳未満と設定している金融機関が多い傾向です。住宅ローンの申込条件で完済時年齢が指定されているため、金融機関のホームページで商品概要を確認しておきましょう。
- 勤務に関する情報
年収だけでなく、申込者の収入面での情報を確認するために勤務先および勤務先の事業内容、勤続年数、雇用形態などを確認されます。例えば、雇用形態は正社員か非正規社員か、現在の勤務先に勤続何年かなどです。 - 返済負担率
返済負担率(返済比率)とは、ひとことでいうと「収入と返済額(借入額)のバランス」です。年収に対する年間返済額の割合を確認することで、返済負担が重くなりすぎないか、返済不能となるリスクはどの程度かなどについて審査します。ここでいう「年間返済額」とは、申し込みする住宅ローンだけではありません。例えば、ほかの金融機関で教育ローンやカーローン、カードローンなどの借入金がある場合は、それらすべての借入金を含めて算出します。
- 家族に関する情報
本審査を申し込む際の提出書類のひとつに住民票(または住民票記載事項証明書)があります。これは、同居(入居予定)の家族全員分の続柄が記載されたものでなければなりません。世帯人数や家族構成が支出額に影響することを考えると、住宅ローンの審査でも重視される項目のひとつと考えられます。
- 担保(物件)に関する情報など
住宅ローンでは、金融機関が融資対象となる土地や建物に担保として抵当権を設定します。住宅ローン契約者が万が一返済を続けられない場合は、担保となっている土地や建物を売却し、売却額を住宅ローン残高の返済に充てるのが目的です。そのため、「対象物件がいくらで売れそうか」という担保評価が行われます。場合によっては、担保評価額が融資可否や融資額の判断に影響するケースもあるでしょう。
本審査でNGとなりやすい理由
ここからは、本審査でNGとなりやすい主な理由を紹介します。本審査で否決されないように確認しておきましょう。
書類不備
審査で確認する書類に不備があると審査が遅れてしまいます。ここでいう「不備」とは、「提出書類にもれがある」「有効期限切れの書類がある」といったものだけではありません。
例えば、事前審査で申告した年収と本審査申込時に提出した収入に関する書類の数値が異なる場合も不備となります。申告した内容と提出した書類内容に不備があると、再度審査がやりなおしとなり、場合によっては審査に落ちる可能性もありますので、きちんと準備しておきましょう。
事前審査時の情報と本審査時の情報が異なる
事前審査と本審査で情報が異なるのは、書類上だけではありません。例えば、以下のように本審査をする際に事前審査時と申込情報が変わっているような場合は注意が必要です。
- カードローンやキャッシングなど新たな借り入れを行った
- 転職(退職)した
- 利用しているカードローン(キャッシング)などの延滞をしたなど
返済負担率が変化したり、信用情報に懸念事項が発生したりすると審査に大きな影響を及ぼしかねません。事前審査に通過しても、本審査では再度信用情報などを厳密に確認される点は覚えておきましょう。
担保となる物件の担保評価が低い
金融機関が担保にする住宅や土地は、審査に影響を与えます。住宅購入額がそのまま担保評価額となるわけではなく、各金融機関の担保評価基準で物件価値が算出されるます。
そのため、担保の評価価値が借入希望額に対して低い場合は、本審査に通らない可能性があります。
本審査を受けるための必要書類
繰り返しになりますが、本審査では提出書類を精査されるため、書類不備があると審査が遅れてしまいます。場合によっては、審査に通らない可能性もありますので、慎重に準備しましょう。
ここでは、本審査を申し込む際に必要となる一般的な書類を紹介します。ただし、具体的な書類は、申し込む金融機関によって異なる場合があるため、実際に申し込みする際は必ず金融機関のホームページなどで確認するようにしてください。
- 本人確認書類
健康保険証や住民票(または住民票記載事項証明書)など、本人確認書類が必須です。住民票などの公的書類の場合は「発行してから○ヵ月以内」というルールが金融機関ごとにあるため、必ず確認しておきましょう。 - 所得を証明する書類
就業状況によって提出する書類が異なりますが、申込者の所得を証明できる書類が必要です。例えば、会社員などの給与所得者であれば源泉徴収票、個人事業主であれば確定申告書、納税証明書などがあります。書類によっては「直近○年分」という規定もあるため、必ず確認しておきましょう。
- 物件を確認する書類
担保評価のために物件に関する書類が必要です。住宅新築や中古戸建て、新築マンションなど、住宅ローン申し込みの対象となる物件の種類によっても提出書類が異なるため、必ず確認しておきましょう。例えば、マンションであれば売買契約書や重要事項説明書、間取りがわかる平面図(または間取図)などがあります。
- その他書類
上記以外にも、書類提出が必要になる場合もあります。例えば、カードローンや教育ローンなどの借り入れがある人は、返済予定明細書などを提出しなければなりません。その他書類は、申込者によって異なるため、「自分の場合は何が必要になるか」確認しておきましょう。
まとめ
一般的に、住宅ローン審査は、事前審査と本審査の2段階で行われます。それぞれに目的が異なり、本審査では事前審査よりも厳密かつ入念に審査が行われる傾向です。場合によっては、事前審査に通過しても本審査で否決される場合もあります。。
事前審査に通過したからといって気を緩めずに、慎重に本審査のための準備を進めていきましょう。
◆氏名
續 恵美子(つづき・えみこ)
◆保有資格
日本FP協会認定CFP(R)
◆プロフィール
生命保険会社にて15年勤務した後、ファイナンシャルプランナーとしての独立を目指し退職。その後、縁があり南フランスに移住。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動中。