-
銀行からのお知らせ
住宅ローンの返済を行っている方の中には、「毎月の返済負担を減らしたい」、「返済期間を短くして老後に備えたい」などの理由から繰り上げ返済を検討している方もいるでしょう。
住宅ローンの繰り上げ返済を行うと、ローン残高を減らすことで支払利息を軽減する効果を得られます。繰り上げ返済の方法やタイミングによって得られる効果が変わってくるため、しっかりと理解した上で検討するのが重要です。まずは、繰り上げ返済の2つの種類の違いを理解し、どちらの方が自分に適しているかを考えてみましょう。
また、繰り上げ返済にはメリットだけでなくデメリットも存在します。将来の支払負担を抑えるために繰り上げ返済したにも関わらず、人によってはあまり効果が得られないばかりか、繰り上げ返済を行わない方が良かったというケースも考えられます。
そこで、今回の記事では繰り上げ返済のメリット・デメリットを詳しく解説しつつ、「住宅ローンの繰り上げ返済はしない方が良い」と言われる理由を紹介していきます。
個々の状況によっては、住宅ローンの繰り上げ返済ではなく、借り換えの方が適している場合もあります。そもそも借り換えのメリットを知りたい、という方は、借換えガイドも参考にしてみてください。
目次
住宅ローンの繰り上げ返済とは
住宅ローンの繰り上げ返済とは、元金の一部または全部を本来の返済計画よりも前倒しで返済することです。借り入れた元金が減ることで支払う利息も減り、総返済額を抑える効果があります。
繰り上げ返済は好きなタイミングで行うことができて、返済する金額も自分で決められるため、ある程度資産に余裕ができたタイミングやボーナスが支給されたタイミングなどで繰り上げ返済を行う人が多いようです。
繰り上げ返済の方法には、返済期間を短くする「期間短縮型」と、返済期間はそのままで毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」の2種類があります。それぞれの仕組みやメリットを理解して、自分に合った方法を選ぶのが大事です。
また、繰り上げ返済は借入後早い時期に行うことで、利息の軽減効果が大きくなります。同じ金額の繰り上げ返済でも、借入から10年後に行うのと20年後に行うのとでは、前者の方が最終的な総返済額が小さくなります。
繰り上げ返済の種類
繰り上げ返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。以下は、両者を比較してまとめた表です。
期間短縮型 | 返済額軽減型 | |
---|---|---|
毎月の返済額 | 変わらない | 減る |
返済期間 | 短くなる | 変わらない |
利息軽減効果 | 返済額軽減型に比べて効果が大きい | 期間短縮型に比べて効果が小さい |
以下で、それぞれの仕組みや特徴について詳しく解説していきます。
期間短縮型
繰り上げ返済の「期間短縮型」は、毎月の返済額はそのままで返済期間を短縮する方法です。完済までの期間が短くなるため、それまでに支払う予定だった支払利息を減らせるというメリットがあります。
元利均等返済でローンを組んでいる場合、返済額の中で利息部分が占める割合は、借入当初が最も高く、時間の経過とともに減少していきます。このため、借入から早いタイミングで繰り上げ返済を行うほど、利息を軽減するという面で効果的です。
期間短縮型での繰り上げ返済を行う場合、完済時期を前倒しできるため、それだけ早く毎月のローン返済から解放されます。定年退職までに住宅ローンを完済したいという方や、なるべく早くローンの支払いを終えて老後の生活に備えたいという方は、期間短縮型が向いているでしょう。
返済額軽減型
「返済額軽減型」は、返済期間はそのままで毎月の返済額を減らす方法です。月々のローン支払額が抑えられるため、家計への効果を実感しやすいという特徴があります。繰り上げ返済によって一時的に多くの支出が発生しますが、毎月の支出総額が抑えられることで生活の負担が軽減されるでしょう。
ただし、返済額軽減型は期間短縮型に比べて、利息の軽減効果自体はやや低いという点がデメリットです。毎月の返済負担は減りますが、完済までの期間は変わらないため、総返済額は期間短縮型よりも大きくなりやすいです。
子どもの教育費や親の介護費など毎月かかる支出が生活費を圧迫しているという方や、転職や独立など働き方が変わったことで収入が減少したという方で、毎月の固定費を見直したいという方に適した繰り上げ返済の方法です。
住宅ローン繰り上げ返済のメリット、デメリット
住宅ローンの繰り上げ返済には、メリットとデメリットがそれぞれ存在します。自分にとってのメリット・デメリットを比較した上で、繰り上げ返済を行うか検討しましょう。
繰り上げ返済のメリット
繰り上げ返済のメリットは、その後の支払利息を軽減できる点です。具体的に、以下のケースで繰り上げ返済を行った場合の効果を確認してみましょう。
-
【住宅ローンの例】
- 借入額:3,000万円
- 返済期間:35年
- 金利:年1.2%(固定)
- 現在の毎月返済額:87,510円
- 返済方法:元利均等
- ボーナス返済:なし
- 繰り上げ返済:返済開始から3年目で300万円を繰り上げ返済
- ※借り換え時にかかる諸費用は考慮しないものとします。
- ※下記のご返済額は単純比較であり、実際のご返済事例を示すものではありません。
返済内容 | 期間短縮型 | 返済額軽減型 |
---|---|---|
毎月の返済額 | 87,510円 | 78,078円 |
残りの返済期間 | 27年11ヶ月 | 32年0ヶ月 |
利息軽減額 | 1,294,315円 | 612,597円 |
上記のように、期間短縮型では残りの返済期間を短くできて、返済額軽減型では毎月の返済額を減らせます。期間短縮型か返済額軽減型かによって最終的な利息軽減効果は異なりますが、どちらを選んでも元金とそれに伴う支払利息を削減できます。元金の残高を減らしておくことで、将来的に適用金利が上がった際に受ける影響を抑えやすくなるというのもメリットと言えます。
繰り上げ返済のデメリット
住宅ローンの繰り上げ返済には、メリットだけでなくデメリットもあります。
まず、繰り上げ返済によって一時的に手元の資金が大きく減ってしまうことです。一度返済したお金は手元に戻せないため、預貯金から一気に繰り上げ返済を行うと、その後大きな支出が発生した場合に生活が圧迫されてしまう恐れがあります。
次に、繰り上げ返済によってローン残高が減ると、住宅ローン控除の控除額が減ってしまう可能性もあります。年末時点のローン残高を基準として住宅ローン控除額が計算されるため、繰り上げ返済によってローン残高が減ってしまうと、結果として税負担が大きくなってしまうケースもある点に留意しましょう。
また、金融機関によっては繰り上げ返済できる金額に制限を設けている場合があります。希望の金額で繰り上げ返済できないケースもあるため注意が必要です。加えて、繰り上げ返済には手数料がかかる場合もあります。どのくらいの手数料が必要かは金融機関によって異なるため、繰り上げ返済を検討している方は事前に確認しておきましょう。「1回あたり数万円」というように高額の手数料がかかる金融機関の場合、何度も少額の繰り上げ返済を行ってしまうと手数料負担が大きくなってしまいます。
繰り上げ返済はしないほうが良いと言われる理由
「住宅ローンの繰り上げ返済はしない方が良い」と言われることがあります。以下で、その理由について確認していきましょう。
住宅ローン金利は低金利であること
低金利が続く日本では、住宅ローン金利も低金利で推移しています。特に、変動金利を選んでいる方は、金利が年1.0%を切っていることも珍しくなく、そもそも利息負担はそれほど大きくないと言えます。
繰り上げ返済の主な目的は、将来の支払利息を軽減することですが、適用される金利がそれほど高くない場合、削減される利息も当然そこまで大きくなりません。繰り上げ返済を検討している方の住宅ローン金利の水準や残りの返済期間によっては、さほど家計に与える効果がない場合もあるでしょう。
すでに適用金利が低い場合、余裕資金を繰り上げ返済ではなく資産運用に回す方が有利に働くケースがあります。例えば、適用金利が年1.0%の場合、資産運用で年1.0%以上の利回りが得られれば、繰り上げ返済よりもメリットが大きいと言えます。
ただし、資産運用にはリスクが伴うため、運用状況によっては元本を割り込んだり、期待した利回りが得られなかったりする可能性もあります。資産運用に挑戦する際は、運用商品の仕組みやリスクをよく理解した上で始めましょう。
もしものときの余裕資金を確保できること
住宅ローンの繰り上げ返済を行うと、将来の支払利息が軽減できる代わりに、手元の資金が減ってしまいます。繰り上げ返済後に突然まとまったお金が必要となった場合も、一度繰り上げ返済によって支払ったお金は戻りません。
子どもがまだ小さいケースや、今後転職・退職の可能性があるケースでは、もしものときに備えて余裕資金を預貯金の形で確保しておいた方が良い場合もあるでしょう。
繰り上げ返済を行う場合でも、病気や失業など緊急事態に備えるための資金はしっかりと確保しておくのをおすすめします。
住宅ローン控除などの優遇がなくなること
住宅ローンの繰り上げ返済を行うと、住宅ローン控除額が減少してしまったり、制度自体を利用できなくなってしまったりする可能性があります。
住宅ローン控除を受けるためには、返済期間が10年以上であることが条件です。期間短縮型の繰り上げ返済を行うことで、返済期間が10年を下回ってしまうと住宅ローン控除が利用できなくなってしまいます。繰り上げ返済を行う際は、実行後の新しい返済期間を確認し、住宅ローン控除の適用条件を満たしているかチェックしましょう。
さらに、住宅ローン控除は、年末のローン残高に控除率をかけて控除額を求めます。ローン残高が減少すると、住宅ローン控除による控除額も減少する可能性があります。
繰り上げ返済か住宅ローン控除のどちらを優先した方が有利に働くかは、収めている所得税や住民税、借入残高、適用金利などによって変わってくるため、個別の状況に合わせてシミュレーションするのが大事です。繰り上げ返済によって享受できる利息の軽減効果と、住宅ローン控除によって受けられる控除額を比較した上で、どうするべきかを決めましょう。
また、繰り上げ返済後に団体信用生命保険(団信)の保険金が支払われた場合、繰り上げ返済の意味がなくなってしまう点にも注意が必要です。
団信は、契約者の死亡や高度障害時に保険金が支払われるのが一般的ですが、最近では介護保障付きの団信やガン団信など、さまざまなケースを手厚く保障する団信も登場しています。団信の保険金が支払われた場合は、繰り上げ返済を行わずに手元にお金を残しておいた方が良かったと感じることもありえるでしょう。
まとめ
住宅ローンの繰り上げ返済には、総返済額を減らせるというメリットがあります。しかし、人によっては住宅ローン控除額が減少してしまったり、病気や失業などの緊急時の資金が足りなくなったりする可能性があります。
また、そもそも住宅ローンの適用金利が低い場合、繰り上げ返済による返済額の軽減効果をあまり受けられない場合もあるでしょう。
「毎月の返済額を抑えたい」という目的で繰り上げ返済を検討している方は、金利の低い住宅ローンへの借り換えも選択肢に入れるのをおすすめします。住宅ローンを借り換えることで、手元の資金は大きく使わずに毎月の返済負担を軽減できる可能性があります。
ただし、借り換えには事務手数料などの諸費用がかかるため、検討の際はコストを含めても借り換えメリットがあるかをよくシミュレーションしましょう。以下のページでは、現在の住宅ローンを借り換えた場合にどのくらい返済額を減らせるか手軽に試算できるため、借り換えを検討している方はぜひ試してみてください。