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住宅ローンの固定金利と変動金利はどう選ぶ?金利タイプを解説

2022年2月、メガバンクを中心に住宅ローン10年固定金利型の基準金利の引き上げが行われたことにより、「固定金利と変動金利のどちらを選ぶべきか迷う」という人もいるかもしれません。住宅ローンには、大きく分けて3つの金利のタイプがあり、それぞれに特徴が異なります。

今回は、住宅ローンを借りてマイホームの購入を検討している人のために、固定金利と変動金利のそれぞれの特徴と選び方について解説します。それぞれの金利タイプがどのような人に向いているかも紹介しますので、住宅ローンの金利タイプを選ぶ際の参考にしてください。


目次

  1. 住宅ローンの金利タイプを知っておこう
  2. 重視することによって選ぶ金利は変わる!
  3. 迷った場合は「ミックス・ローン」も考えよう

住宅ローンの金利タイプを知っておこう

住宅ローンの金利タイプは、大きく分けると「変動金利」「固定金利選択型」「全期間固定金利」の3つです。一般的には、変動金利、固定金利選択型、全期間固定金利の順で金利が高くなっていきます。

  • 変動金利
    金利情勢の変化で金利が変更するため、金融機関にとっては金利上昇リスクが低く、金利情勢に合わせて低金利に設定することができるタイプです。一般的には、年に2回金利の見直しがあります。
  • 固定金利選択型
    一定期間は、固定金利となり、期間満了後は固定金利と変動金利を選択できるタイプです。原則一定期間内に変動金利へ変更することはできません。
  • 全期間固定金利
    全期間金利が固定されるため、借り入れ時に総返済額が確定するタイプです。完済まで毎月の返済金額が変わらないため、家計管理がしやすい点がメリットです。金融機関側からすると超長期の契約となり、金利変動によるリスクが大きくなるため、3つの中では最も金利が高い傾向です。

    住宅金融支援機構が公表している「住宅ローン利用者調査(2021年10月調査)」によると、変動金利を選択している人は、住宅ローン利用者の約67.4%でした。借入先別の金利タイプでは、以下のようにどの金融機関でも変動金利を選択している人が多いことが分かります。

借入先 変動金利を選択した割合
銀行 70.9%
信用金庫・信用組合 66.1%
労働金庫 67.7%
JAバンク 64.1%

参考: 独立行政法人住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2021年10月調査)】別ウィンドウまたはタブで開きます

住宅ローンの金利タイプを選ぶ際は、まず金利タイプの特徴を知ることが大切です。3つの金利タイプの特徴を見ていきましょう。


固定金利選択型とは?

固定金利選択型は、2年・3年・5年・10年・20年など、金利が変わらない期間を選ぶことができます。固定期間の年数の選択肢は、金融機関によって異なり、固定期間が短いほど金利が低い傾向にあるのが特徴です。

一般的に、固定期間終了時に何も手続きをしないと、自動的に変動金利へ切り替わりますが、再度固定金利の期間を選択することもできます。固定金利の期間終了ごとに金利の種類が選べる柔軟さと、バランスのよさを兼ね備えたところも固定金利選択型の魅力です。

固定金利選択型は、主に以下のような人に向いています。

  • 金利の動きに悩まされるのは嫌だが、ある程度の低金利によるメリットは享受したい人
  • 子どもが大学を卒業するまでなど、一定の期間支出が増加し、返済額の変動があると困る人

全期間固定金利とは?

全期間固定金利型は、完済まで金利が変わらない金利タイプです。そのため、毎月の返済金額も返済期間終了まで変更されません(初回や最終回の端数調整は除く)。借り入れ後に、市場金利が上昇した場合でも金利は変更されないため、ライフプランに影響を与えず、金利上昇時のリスクヘッジになることが大きな特徴です。

ただし、将来にわたって金利が低いままの場合は、変動金利に比べて支払利息が多くなるデメリットがあります。全期間固定金利は、主に以下のような人に向いています。

  • 金利の動きを気にしたくない人
  • 借入期間中ずっと返済額が変わらず、計画的に返済したい人
  • いずれ金利が上がると予想している人

変動金利とは?

変動金利は、金融機関独自で設定される短期プライムレートなどの基準金利に連動して半年に1度金利の見直しが行われる金利タイプです。金融機関によって異なりますが、一般的には以下のふたつのルールを設定しています。

  • 5年ルール:金利の変更があっても5年間は返済金額が変わらない
  • 125%ルール:金利が上昇して毎月の返済金額が増えたとしても1.25倍の範囲内までしか増えない

これらは、変動金利ならではの特徴といえるでしょう。一般的に、変動金利は3つの中でも金利が最も低くなるため、低金利時にはメリットを受けることができます。しかし、将来的に金利が上昇した場合、「結果的に最初から固定金利のほうが支払利息は少なかった」など、一定のリスクがあることは注意が必要です。

変動金利は、主に以下のような人に向いています。

  • 低金利のメリットを最大限に活かすため金利の低さを重視したい人
  • 金利の上昇により返済額が変わっても返済を続けることができる人
  • 金利の変化に影響が少ない返済期間の短い住宅ローンを組む人

重視することによって選ぶ金利は変わる!

住宅ローン契約者が何を重視するかで選ぶ金利タイプは変わるため、どれが最も良いとは一概にはいえません。固定金利・変動金利のどちらもメリットとデメリットがあるため、自身のライフプランや将来の支出の予定に合わせて選ぶとよいでしょう。


金利を重視したい人向きの金利タイプ

金利の低さを重視したい人は、変動金利が最も低金利となる傾向のため、おすすめです。固定金利型は、期間が長くなるにつれて金利が高くなります。また、変動金利を選ぶ場合は、「5年ルール」「125%ルール」が適用される金融機関なのか、確認も大切です。

これらのルールが設定されている場合でも確認しておきたい内容もあります。例えば、金利が急激に上昇したことなどに伴い未払利息が発生すると、住宅ローン完済時に未返済分を精算しなければならないケースもあります。

毎月の返済額が同じ金額でも、金利上昇により支払利息が増えれば毎月の返済額のうち、利息部分の割合が多くなり、元金の割合が少なくなります。5年ルールを適用している金融機関の場合、急激な金利の上昇で支払利息が増加しても、毎月の返済額は5年間変わりません。

また125%ルールでは、5年経過後に返済額の変更があっても返済額は125%の範囲内です。そのため、返済金額では増加した支払利息が賄えず、未払利息が発生する可能性があるのです。借入期間が長く残高が多いケースでは、金利上昇リスクに備えておく必要があります。以下のような人は金利変動による影響がさほど大きくないため、変動金利にむいているといえるでしょう。

  • 収入に余裕があり金利上昇に伴い返済額が増加しても気にならない人
  • 住宅ローンの返済期間が短い人
  • 借入残高が少ない人

金利が上昇すると考える人向きの金利タイプ

今後、金利が上昇していくと感じる人であれば、固定金利選択や全期間固定タイプが向いています。特に、全期間固定金利は「ずっと返済額を変えたくない」と考える人は選択肢に入れておきましょう。

固定金利は、金利上昇時のリスクヘッジになるため、金利上昇局面で大きなメリットとなります。借入当初は変動金利を選択した場合でも、金利上昇局面で固定金利に切り替えることも可能です。

しかし、一般的に変動金利上昇時は固定金利も上昇している可能性が高く、また金利が上がりきってから固定金利に借り換えても意味がありません。そのため、金利の動きに悩まされたくない人は全期間固定金利を選択するのがよいでしょう。

  • 将来の金利が上昇すると考える人
  • 毎月の返済額を一定にして長期間計画的に返済したい人

教育費などがかかる予定がある人向きの金利タイプ

子どもが在学中で、教育資金が必要な時期だけ固定金利にすることも選択肢のひとつです。例えば、大学卒業まであと5年であれば、5年固定の固定金利選択型を選択するのもよいでしょう。

一定期間だけ支出が増加する場合は、固定金利選択型も選択肢となります。「クルマのローンが終わったら」「子どもが大学を卒業したら」など、近い将来生活費に余裕が生まれるケースなら、その期間だけ固定金利を選択し、その後変動金利に切り替える方法も可能です。これも、ライフプランに合った返済方法といえるでしょう。

固定金利選択型は、状況に合わせて2年・3年・5年・10年などと固定金利の期間の長さを自由に選ぶことができます。変動金利に切り替えることも視野に入れつつ、ライフプランに合わせて計画的に返済したい人は、固定金利選択型を選択肢に入れてはいかがでしょうか。


迷った場合は「ミックス・ローン」も考えよう

固定金利と変動金利のどちらがいいか迷った場合は、ミックス・ローンも選択肢となります。固定金利と変動金利を組み合わせることで、リスク分散にもつながり、金利変動リスクに備えることが期待できます。

ミックス・ローンとは、複数の金利タイプを併用できる住宅ローンの借り入れ方法の一種です。住宅ローンの借入金を分割し、ひとつは変動金利、ひとつは10年間固定金利というように、ふたつの異なる金利タイプを組み合わせて借り入れできます。

例えば、5,000万円の住宅ローンを組むケースで考えてみましょう。

【ミックス・ローンで5,000万円借り入れした例】

  • 1本目:3,000万円(変動金利)
  • 2本目:2,000万円(10年間固定金利)

ひとつは変動金利でローンを組み、もうひとつはほかの種類の金利タイプを選択する方法です。一部繰り上げ返済をする場合も、どちらのローンを返済するのか、その都度自由に選ぶことができます。

また返済期間中に一方だけ金利タイプを変更することも可能です。ミックス・ローンを上手に活用できれば、金利タイプの選択肢の幅も広がるでしょう。


まとめ

住宅ローンの金利タイプは、大別すると「変動金利」「固定金利選択型」「全期間固定金利」の3つです。「どの金利タイプが最適か?」は、世帯構成やライフプラン、また金利動向の考え方などによって大きく異なります。

そのため、まずは各金利タイプの特徴を理解して、自分に合った金利タイプを検討します。将来の金利を予測するのは難しいですが、どちらか選びにくい人には変動金利と固定金利を組み合わせることができるミックス・ローンという選択肢もあります。

住宅ローンは、数千万円など借入金額が大きくなることが多い傾向です。自身の収支状況やライフプランに最適な金利タイプを選び、無理なく計画的に返済できるようにしましょう。

◆氏名
加治 直樹(かじ・なおき)

◆保有資格
1級FP技能士
社会保険労務士

◆プロフィール
銀行に20年以上勤務し、融資及び営業の責任者として不動産融資から住宅ローンの審査、資産運用や年金相談まで幅広く相談業務を経験。在籍中に1級ファイナンシャル・プランニング技能士及び特定社会保険労務士を取得。退職後、かじ社会保険労務士事務所として独立。現在は労働基準監督署で企業の労務相談や個人の労働相談を受けつつ、セミナー講師など幅広く活動中。中小企業の決算書の財務内容のアドバイス、資金調達における銀行対応までできるコンサルタントを目指す。法人個人を問わず対応可能で、会社と従業員双方にとって良い職場をつくり、ともに成長したいと考える。

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