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住宅ローンを利用して住宅を購入した場合、一定の要件を満たせば支払う税金が軽減されます。住宅ローン控除でどれくらい税金が軽減されるかは、借入残高や所得の大きさ、物件の区分、世帯構成などによって異なります。
住宅の購入を検討する際は、住宅ローン控除でどのくらいの税額が控除されるか、どのように手続きを行えば良いかも併せてチェックしておきましょう。
この記事では、住宅ローン控除制度の概要や手続き方法、利用するための要件などを解説します。
目次
住宅ローンの控除制度とは
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームの新築や取得などを行った場合に、契約者の税負担を軽減できる制度のことです。正式名称を「住宅借入金等特別控除」といい、適用されるためにはいくつかの条件があります。
住宅ローン控除は、毎年12月末日の住宅ローン残高と住宅を取得した対価のいずれか少ない金額をもとに計算し、その一定割合が所得税から控除される仕組みです。
控除方法は、所得税額から住宅ローン控除で計算した金額を直接差し引く税額控除となり、所得税そのものの軽減ができます。税金を計算する際の課税所得金額を減らせる所得控除とは異なることも覚えておきましょう。
この制度では、マイホームの新築や取得をして入居した年から一定期間、毎年所得税から控除額を差し引くことが可能です。また、所得税から控除しきれない金額があった場合には、その一部が住民税から控除されます。
控除される金額はどれくらいか
住宅ローン控除を利用すると、年末時点の住宅ローン残高に所定の控除率(一律0.7%)をかけた金額が所得税から控除されます。
税額控除額=年末時点の借入残高×控除率0.7%
控除が適用される期間は最大13年で、新築・取得する住居の種類に分かれて借入限度額が定められています。性能の高い住宅ほど控除を受けられる金額が高いのが特徴です。新築住宅を取得した場合の借入限度額は次のとおりです。
区分 | 2022年〜2023年 | 2024年 | 2025年 | |
---|---|---|---|---|
子育て世帯・若者夫婦世帯 | 一般の世帯 | |||
認定長期優良住宅(長期優良住宅) | 5,000万円 | 5,000万円 | 4,500万円 | 4,500万円 |
低炭素建築物(認定低炭素住宅) | 5,000万円 | 5,000万円 | 4,500万円 | 4,500万円 |
低炭素住宅物とみなされる特定建築物(認定低炭素住宅) | 5,000万円 | 5,000万円 | 4,500万円 | 4,500万円 |
特定エネルギー消費性能向上住宅(ZEH水準省エネ住宅) | 4,500万円 | 4,500万円 | 3,500万円 | 3,500万円 |
エネルギー消費性能向上住宅(省エネ基準適合住宅) | 4,000万円 | 4,000万円 | 3,000万円 | 3,000万円 |
一般の新築住宅(その他の住宅) | 3,000万円 | 0円※ | 0円※ | 0円※ |
- ※ 2023年中に建築確認を受けている場合は2,000万円
2024年の税制改正による影響(金額編)
もともと2022年度の税制改正によって、2024年からは控除を受けられる借入限度額が引き下がる予定となっていました。しかし、住宅価格の上昇や子育て世帯への支援強化の必要性の高まりなどを背景として、2024年の税制改正では住宅ローン控除制度の内容が一部変更されました。
【2024年の税制改正の主な変更内容】
- 子育て世帯や若者夫婦世帯における借入限度額の引き下げ見送り
- 新築住宅の床面積要件の緩和措置の延長
- 住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税措置の延長
- 既存住宅のリフォームに係る所得税の特例措置
特に、控除の金額に影響するのは、「借入限度額の引き下げ見送り」の部分です。子育て世帯・若者夫婦世帯が2024年に一定の基準を満たす新築住宅等に入居する場合は、2023年までの控除水準がそのまま維持されることとなりました。なお、子育て世帯・若者夫婦世帯とは、「19歳未満の子を有する世帯」または「夫婦のいずれかが40歳未満の世帯」を指します。
住宅ローン控除を受けるための条件について
住宅ローン控除を受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。新築住宅、中古住宅、買取再販住宅のそれぞれの場合について、適用要件を確認していきましょう。
条件①:新築住宅の場合の適用要件
新築住宅を購入して住宅ローン控除を受ける場合、必要な要件は以下の通りです。
- 住宅の新築等の日から6ヶ月以内に居住していること
- 控除を受ける年末時点で居住していること
- 床面積が50㎡以上でかつ床面積の2分の1以上を居住用としていること(一部の住宅は40㎡以上50㎡未満で適用可)
- 住宅ローンの返済期間が10年以上あること
- 2以上の住宅を所有している場合は主な居住用住宅であること
- 生計を一にする親族や特別な関係のあるものからの取得でないこと
- 贈与による住宅の取得でないこと
細かい要件や判断基準は、国税庁のHPや税務署などで確認するのをおすすめします。
条件②:中古住宅の場合の適用要件
中古住宅を購入して住宅ローン控除を受ける場合は、新築住宅の適用要件に加えて以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 昭和57年1月1日以後に建築されたものであること
- 耐震基準に適合する住宅であること
条件③:買取再販住宅の場合の適用要件
業者が既存住宅を買い取ってリフォームした後に再度販売された住宅のことを買取再販住宅といいます。買取再販住宅を購入して住宅ローン控除を受ける場合は、新築住宅の適用要件に加えて以下の要件を満たす必要があります。
- 個人が既存住宅を取得する時点で、新築日から10年を経過したものであること
- 特定増改築等に係る工事の費用総額が、住宅の売買価額の20%以上であること
- 既存住宅について、対象となる特定増改築等に係る工事が行われていること
- 宅地建築物取引業者が既存住宅を取得してから2年以内に個人で取得していること
- 建築後使用されたことのある家屋で一定の条件を満たすこと
特定増改築等の工事内容には細かい条件があるため、買取再販物件の購入を検討する際は、事前に住宅ローン控除の条件を満たしているか業者に確認しましょう。
2024年の税制改正による影響(条件編)
2024年の税制改正によって、床面積要件の緩和が延長されました。これは、合計所得金額1,000万円以下の方が新築住宅に入居する場合に限り、床面積の要件を40㎡に緩和するという措置のことです。
本来、2023年末でこの措置は終了する予定でしたが、2024年末まで延長されることとなりました。なお、2025年についても2024年と同様の方向性で検討されています。
住宅ローン控除の手続きの流れ
住宅ローン控除を受けるためには、所定の手続きが必要です。具体的にどのように手続きすればよいか確認しましょう。
1年目にまずは確定申告を行う
住宅ローン控除を受けるためには、入居した翌年に確定申告を行います。確定申告の手続きに必要な書類は下記のとおりです。
【初年度に確定申告で住宅ローン控除を行う際の必要書類】
- 確定申告書
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 金融機関等から交付された住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
- 登記事項証明書
- 売買契約書の写し、工事請負契約書の写しなど家屋の取得対価の額を明らかにする書類
- 耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書の写し、既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約に関する付保証明書など(中古住宅の場合)
- 勤務先の源泉徴収票(給与所得がある場合)
住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書は、10月〜翌1月頃に金融機関から郵送されます。
また、上記の提出書類に加えて、認定住宅等の区分に応じた書類の提出が必要となります。区分ごとの必要書類については、国税庁のHPなどで確認して準備しましょう。
2年目以降は年末調整での申告を行う
会社員の場合、2年目以降は年末調整の手続きを行うことで、住宅ローン控除を受けられます。年末調整のために必要な書類は下記のとおりです。
【年末調整で住宅ローン控除を行う際に必要な書類】
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書兼年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書(以下、「住宅借入金等特別控除申告書」)
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
初年度に確定申告を行うと、その年の10月頃に税務署から「住宅借入金等特別控除申告書」が送付されます。また、11月下旬頃に金融機関から「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」が送付されます。
給与所得以外に収入のない会社員の場合は、この2種類の書類を年末調整の際に提出することで、2年目以降の住宅ローン控除手続きが完了します。
住宅借入金等特別控除申告書は、控除期間分の書類がまとめて1回で送られるため、紛失に注意しましょう。
還付申告について
確定申告を行う期間は、原則として毎年2月16日〜3月15日までの1ヶ月間です。しかし、この期間に住宅ローン控除の申請を忘れてしまっても、5年以内であれば還付申告ができます。
還付申告が可能なのは、確定申告対象の年の翌年1月1日から5年間です。例えば、2024年に住宅を購入した場合、2025年1月1日から2029年12月31日までに還付申告を行えば、払い過ぎた所得税が還付されます。5年間の還付申告の期限が過ぎてしまうと、所得税の還付申告は行えません。
まとめ
住宅ローン控除を利用すると、住宅ローンの返済負担を小さく抑えられます。住宅購入の際は、住宅ローンの返済額に加えて、住宅ローンでいくら控除を受けられるかもシミュレーションしておきましょう。
また、住宅ローン控除を受けるためには、所定の条件を満たしつつ、定められた期間内に適切な手続きを行う必要があります。自分で手続きをしないと税額控除は受けられないため、確定申告や年末調整の際に忘れずに手続きを行いましょう。